空間というものは目には視えない蜃気楼のようなものです。光や風の音も同じように目には見えません。しかし、影を感じ、風鈴の風に揺れる音を聞きとるときに、その視えないそれぞれのファクターは心のなかにふと蘇ってくることは誰しもが感じることだと思います。建物の外観やその色彩、素材などの多くの目に視えるものから、そのように目に視えないものをフィルターに通すことで空間の広がりが増していきます。

この本泉寺納骨堂はそのような目には視えない大切な何かを発信する場所として、私たちは捉えてきました。それは宗教という心の拠り所と同じように建築という目に見えない空間を心のなかに想像することによってそれぞれが活かされ、新しいメッセージを伝えてくれると信じています。

子どもたちが遊び、そして皆がそこで出会い、ふれあい、会話をし、さらに街並みは豊かになるでしょう。そして、再び訪れたくなる一人一人の心のふるさととして、この本泉寺納骨堂が記憶の一ページを創っていくことを期待しています。

長瀬信博 (ながせ のぶひろ)兵庫県神戸市出身。神戸大学工学部建築学科卒業。
長瀬信博建築研究所主宰。近畿大学非常勤講師、神戸芸術工科大学非常勤講師。
第49回大阪建築コンクール 大阪府知事賞、東北歴史博物館コンペ特別選賞など、受賞作品多数。